TOHOKU UNIVERSITY

東北大学 高等研究機構 材料科学コアリサーチクラスター

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2025.02.18

プレスリリース 

どのようにしてニッケル資源を節約しつつ金属材料強度を維持するか?

発表のポイント

世界のニッケル供給量の70%以上はステンレス鋼の製造に使用されています。ステンレス鋼は費用対効果が高く、強度があり、耐腐食性に優れた合金で、建設、輸送、医療機器の開発などに広く使用されています。しかし、過去20年間の世界的なニッケル供給の変動により安定した生産を維持することが大きな課題となっています。

このたび、東北大学と清華大学の研究チームは積層造形法を使用した2相ステンレス鋼構造を製造することにより、ニッケルを配合しなくても強度を維持した新しいステンレス鋼合金を開発しました。

このアプローチはコストを安定化させ、長期的な資源の確保を可能にするものと期待されます。

概要

ステンレス鋼の中で300シリーズまたはオーステナイト系ステンレス鋼は、ニッケル含有量が最も高く、ステンレス鋼の総生産量の 54% を占めています。このタイプと同じ特性を実現するために、ニッケルを含まず、磁性があり、応力や腐食によるひび割れに強い「フェライト系」に分類されるステンレス鋼に着目しました。

フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比べて破壊強度や硬化率が低いため、用途が限られていますが、オーステナイト系ステンレス鋼と組み合わせたハイブリッド・バイメタル構造にすることで、材料強度を維持しながら、ニッケルへの依存度を低減することができます。

3Dプリンティングの一種である積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング)により、フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼の複合構造を製造しました。具体的には、溶接によって金属層を堆積させるワイヤーアーク積層造形と呼ばれる技術を用いました。製造後にこのバイメタル構造の元素分布と機械的性質を分析した結果、2つの金属の界面微細構造には、どちらか一方のみの場合と比較して、硬度と強度が向上する特徴があることが判明しました。

この研究は材料強度を維持しながらステンレス鋼の製造コストを削減し、製品の耐久性を向上させ、将来に向けた持続可能な金属製造を促進することで、産業界と消費者に利益をもたらすことが期待されます。

論文情報

論 文 名:Interfacial characteristics and microstructural evolution of austenitic to ferritic stainless steels bimetallic structure fabricated by wire-arc directed energy deposition

著 者:Yipu Xu, Run-Zi Wang, Yutaka S. Sato, Shun Tokita, Yue Zhao, Zongli Yi, Aiping Wu

掲 載 誌:Additive Manufacturing

DOI:https://doi.org/10.1016/j.addma.2024.104629

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 材料科学高等研究所 材料科学コアリサーチクラスター
王 潤梓(わん るんずー)
TEL: 022-217-5981
E-mail: runzi.wang.a7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 材料科学高等研究所 材料科学コアリサーチクラスター
TEL: 022-217-5981
E-mail: wrc-material*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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